今回は美少女ゲーム「千の刃濤、桃花染の皇姫(せんのはとう、つきそめのこうき)」にまつわる花とその花言葉、さらに季語について迫っていきたいと思います。
四季や花に所縁がある作品で背景や演出が綺麗でした。男性向けでこのような作品は少なそうな印象だったので少し驚きましたね。
作品のネタバレありとなりますのでご了承ください。
花と花言葉
まずは花と花言葉についてです。
ヒロイン視点に切り替わる際キャラクターと花が描かれた1枚絵が差し込まれていたと思うのですが、こちらはそれぞれのイメージフラワーでしょうか。
花言葉も彼女たちらしいものになっていましたので紹介していきます。
宮国朱璃
まずはメインヒロインの朱璃です。
朱璃と一緒に描かれているのは作品でも存在感のある「桃の花」ではないでしょうか。
その花言葉は「天下無敵」
皇家の生き残りである彼女の堂々とした立ち振る舞いを彷彿とさせる花言葉となっていました。
鴇田奏海
奏海と描かれているのは「白い水仙」でしょう。
花言葉は「尊敬」「神秘」
国民から尊敬を集める翡翠帝としての彼女を表した花言葉になっているようですね。
また、翡翠帝の装いで髪飾りとなっているのは「芍薬」ではないかと考えています。
その花言葉は「慎ましさ」「謙遜」です。
彼女の性格を表すと共に、立てば芍薬~の故事もあるように武人教育を受けた所作も思い起こされます。
ちなみに私服の髪飾りは作り物ですが「ポピー」を模したものだと考えています。
花言葉は「慰め」「妄想」「夢想家」です。
椎葉古杜音
古杜音の花は「たんぽぽ」ではないかと考えています。
花言葉は「神託」「真心の愛」
大御神に願いを届ける巫女の彼女らしい花言葉でした。
また先祖の千波矢も同じくたんぽぽが描かれていたようです。
稲生滸
滸の花は「桔梗」です。
花言葉は「誠実」「気品」「変わらぬ愛」
武人の名家に生まれ、昔から宗仁のことを思ってきた滸らしい花言葉たちです。
他にも武人の姿の滸は「金木犀」のような髪飾りをしているのですが、その花言葉は「気高い人」です。
武人としての誇りを持って生きる彼女を表しているかのようですね。
エルザ・ヴァレンタイン
エルザは「赤い百合」と共に描かれているようです。
百合全体の花言葉は「威厳」「純潔」「無垢」
その中でも赤い百合の花言葉は「願望」
見た目のイメージも華やかで強気なエルザらしいですし、威厳がありつつも乙女な所がある彼女に百合の花言葉はぴったりです。
願望という言葉からは、自身が戦う意味を見つけたいと願った彼女の姿が思い出されました。
他にも
イメージフラワー以外にも、作品全体で桃の花が登場したり宗仁の住まいが糀谷生花店という花屋だったりと、千桃は花がかなり身近な存在の作品だと思います。
翡翠帝が宗仁との出会いの場面で勿忘草を頼んだことも、「私を忘れないで」という花言葉を持つからだと考えています。
妹である自分の存在を思い出してほしかったんでしょうね。
他にも夏に行われた竜胆作戦の竜胆は「勝利」「正義感」という花言葉を持っています。
また鴇田の家紋にも竜胆が入っているとのことですが、源氏にゆかりのある家門にも竜胆が入っていたりします。
その竜胆作戦の直前の8月には、店長が唐菖蒲を贈ってくれるというくだりがありました。
この花は「グラジオラス」という名前の方が現代では馴染みがあるかもしれません。
作中でも紹介されていましたが、「勝利」「密会」「用心」といった花言葉を持っています。
季語について
千桃では章題のような形で、季節感のある風流な一枚絵が度々差し込まれていたのを覚えていますでしょうか。
こちらの言葉には全て俳句などで季節を表す「季語」が用いられていたんです。
順番に紹介していきたいと思います。
雪割草
「雪割草」は初春の季語です。
白や紫、青などの色がある花なのですが、一枚絵にはふきのとうが描かれていますね。
朱璃と宗仁が再会した3月頃、物語序盤の章に使われています。
花篝
主に滸がメインとなる章に使われている季語は「花篝」。
晩春の季語で夜桜を引き立てるために焚かれる篝火の事だそうです。
季語に因んで描かれているのは桜でしょうか。
皇国にとっては夜の闇のようだった状況の中、奉刀会そして皇国を照らす灯りとなっていく滸のことを表しているようだと感じました。
滸が扱う不知火も炎の力を持つ刀として篝火のような存在になっています。
個人的に言葉の響きが好きで気に入っている季語です。
火取虫
奏海やエルザが軸となっていく夏の章は「火取虫」です。
三夏という夏全体の季語でして、夏の夜に灯りに集まってくる虫のことだそうです。
竜胆作戦を中心にそれぞれが思惑を持って集まったことを表しているのでしょうか。
邯鄲の夢
ミツルギと緋彌之命の過去が描かれる章は「邯鄲の夢」。
邯鄲が初秋の季語となっており、鈴虫に似た虫のことです。
名前は中国の故事に由来しており、それが「邯鄲の夢」です。
その故事の内容は、邯鄲という中国の都市である若者が一夜にして人生の栄華を極める夢を見るというもので、人の栄枯盛衰は儚いことの表現として使われます。
まさに緋彌之命が皇帝となるも儚く命を落とすこととなるこの章に相応しい言葉だと思います。
宗仁が自身の生きてきた長い過去を夢で思い出すという状況も故事に近いですね。
柿紅葉
「柿紅葉」は晩秋の季語です。
言葉の通り柿の葉が紅葉することを表すようですね。
柿は古杜音に所縁のあるものなので、彼女が中心となる奥伊瀬野での物語の章題になったのでしょう。
この章、紅葉で秋らしい背景がとても綺麗で思わず見入ってしまった記憶があります。
冬濤
物語のクライマックスである最終決戦の章は「冬濤」。
三冬、冬全体の季語で、風により荒れ狂う冬の波を表します。
怒涛の展開で辛い場面もある最終章に似つかわしい季語が選ばれていますね。
濤という漢字は作品タイトルでも使用されており、黒主大神の世界で因果の歪みを斬り続ける宗仁の刃のことを表現していたようです。千の刃の波。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
言葉やイラスト1つ1つに意味が込められている作品は好きなので調べるのが楽しかったです。
特に季語が使われている作品は中々ないと思います。
季語には日本の季節に対する繊細な表現が詰まっているので、今後物語に味わいを出す機会が増えるといいなと感じました。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
〈参考サイト〉
桃の花言葉(誕生花、英語、季節) | 花言葉-由来 (hananokotoba.com)
水仙(スイセン)の花言葉と由来|色・品種別・英語の花言葉、怖い意味は? | HanaSaku (hanasaku-gift.com)
芍薬(ピオニー)の花言葉|色別には怖い意味もある?見頃の季節はいつ?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
ポピーの花言葉は? 色別に紹介|「マイナビウーマン」 (mynavi.jp)
タンポポの花言葉|怖い意味がある?綿毛と花で意味が違う?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
桔梗(キキョウ)の花言葉|色別の意味や怖い由来とは?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
キンモクセイ(金木犀)の花言葉|怖い意味がある?見頃の季節はいつ?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
ユリ(百合)の花言葉|色別で怖い意味があるの?花の特徴は?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
ユリ(赤)の花言葉 | 花言葉辞典 (hana-navi.net)
季語と歳時記 – きごさい歳時記 (kigosai.sub.jp)
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