今回は終遠のヴィルシュに登場するサブキャラも含めたキャラクターの名前の考察と、それを元にした宗教的観点からの考察です。考察色強めです。
フランス語や聖書など宗教関連の内容が多く含まれるのですが、私は最初一般常識程度しか知識がない状態でした。
その為ネットの海から拾い上げた情報が多分にございますので悪しからず。
FDからの新キャラである漂流者とスピネルも紹介しますが、それ以外の部分であればFDがまだ未プレイの方でもお読みいただいて大丈夫だと思います(イヴの部分で少しFDの要素はありますが)。もちろんネタバレの宝庫なので本編全ルートプレイ済は大前提です。
キャラクター名前考察
既にお気付きの方もいると思いますが、終ヴィルの世界観の名称はフランス語がベースになってます。
ビジュアルファンブックには「アルペシェール」や「庶民区(クーネ)」「富裕区(シュディ)」「研究区(セルネヴォル)」の由来が載っていましたし、FDの漂流者の物語でも名称について語られている部分がありましたね。
これらを元に色々調べた結果、キャラクターの名前にも様々な意味が隠されていたようで夢中で調べてしまいました。
キャラクター数が多いですがお付き合い頂けますと幸いです。
イヴ
イヴのフルネームはイヴ・ノワージュ。
まず名前のイヴは由来の説として2つ考えています。
①フランス語圏の男性名Yves。
弓の良材であり、加工しやすく弾力性のあるイチイの木の意味があるそうです。
実はこれに関して彼の始祖である漂流者と繋がるものがあるのですが、漂流者のパートで紹介したいと思います。
②旧約聖書のイヴ
最初の人間であるアダムとイヴの女性の方と名前が同じですね。
「生きる者」や「生命」という意味があるそうで生命力のあるイヴっぽい気もします。
また漂流者の妻であったリルとイヴは母音が同じなのでここにも関連性があると思います。
ちなみに花と花言葉 Ⅵファンディスク編でも紹介したのですが、リルという名前にはフランス語でユリの花という意味もあります。そう、イヴのイメージフラワーなんです。
苗字のノワージュはFDの漂流者の物語より、アルペシェールのリコリスになぞらえてフランス語で黒(noir)+赤(rouge)であるということが明かされていましたね。
リュカ・プルースト
リュカはフランスで人気の男性名で「光をもたらす人」という意味があるそうです。
リュカ先生のキャッチコピーである「人を導く運命を切望する男」や教師という職業にも通ずるものがあるように思います。
また宗教関連だとイエス・キリストの使徒ルカのフランス語っぽいです。
新約聖書の中に4つの福音書というキリストの教えや行動が描かれたものがあるのですが、その中の『ルカによる福音書』の著者です。
名前の綴りが少し違うような気もするのですが、終ヴィルの漂流者がもたらした本も4冊ということで似ている気がしませんか?
苗字のプルーストは力の意味があるpouvoirと何かを組み合わせたのではと思っているのですが確信はないです。
マティス・クロード
名前のマティスはイエス・キリストの弟子である使徒マタイから派生したフランス語のようです。
こちらには、作中でも描かれていましたが「神様からの贈り物」という意味があるそうでした。
マタイですがこちらも『マタイによる福音書』という4つの福音書の内の1つの著者です。やっぱり関係ある気がしてきませんか・・・?
苗字のクロードは名前の方でフランス語圏にてよく使用されており、語源のラテン語に「欠けた、不完全な」という意味があるそうです。
ホムンクルスであるマティスに合わせて付けられた可能性が高いですね。
シアン・ブロフィワーズ
名前のシアンは科学(science)の前半部分を取っているんだと思います。
英語もフランス語も綴りは同じようですが、フランス語の発音を聞いてみるとシアンと言っているように聞こえました笑
宗教方面から調べてみるとキリストの12使徒の中に熱心党のシモンという方がいました。
名前が似ているし熱心とシアンの熱狂も繋がるような・・・?
そしてブロフィワーズなんですが、フランス語の辞書まで見たのにこれだけ全然語源が分かりませんでした。
有識者の方がいたら是非教えてほしいです。
アドルフ
アドルフはアルペシェール生まれではありません。
調べたところドイツの伝統的な名前で、高貴なる狼という意味があるそうです。
一匹狼のように最低限しか人と関わらず生きてきたアドルフらしい意味が込められていたんですね。
肌や顔立ちからなんとなくスペインかと思っていたのですが、言われてみると実直な内面はドイツっぽい気がします。
他にはこじつけ感もありますが宗教関連の説を2つ挙げます。
①12使徒のアンデレ
またもやキリストの使徒の名前なのですが、イントネーションとかちょっと似てる・・・か・・・?
②旧約聖書のアダム
こちらもイントネーションとかアダムとイブのアダムと似て・・・る・・・?
アダムはヘブライ語で「土」「人間」という2つの意味を持つ言葉に由来しているそうで、普通の人間という立ち位置にあり野菜を育てているアドルフと関連性がある気がします。
アダムとイヴの逸話との関連性については後ほど詳しく記載します。
アンクゥ
アンクゥはフランス・ブルターニュ地方の死を司る精霊の名前です。
つば広帽を被り黒い外套を着た、外側に刃がある大鎌を持つ長身痩躯の男ということで、本編の挿絵の死神はこの姿がモチーフになっていそうです。
元は人間であり、担当地区の死者の魂の管理をしているというのも終ヴィルのアンクゥの設定そのままですね。
セレス
ローマ神話の豊穣の神、大地の神であるケレス(Ceres)のフランス語読みです。
金色の髪の女神で、セレスの容姿はここから着想を得たのかもしれません。
リコリスの花園という大地で生を受けたことも関係があるのでしょうか。
サロメ
サロメは新約聖書に出てくる女性の名で思い人の首を求める残酷なお話のようです。
こちらにはあまり関連性を見出せないのですが、メインは本名であるクリスティーヌ・レーヴポワールの方です。
クリスティーヌはキリスト教の聖人である聖クリスティーナのフランス語系です。
彼女の生い立ちを調べると分かるのですが、父や周囲の人に何度殺されかけても生き延びる姿が、親族や教団の人々に何度裏切られても苛烈にしぶとく生き残ったサロメさんにそっくりなんですね。
苗字のレーヴポワールは①フランス語で夢/理想(Reve)か②女王(Reine)と、①梨(Poire)か②騙されやすい/お人好しの造語だと思います。
組み合わせると、夢や理想がない王族(シャレですが)や騙されやすい女王のような意味が考えられるのではないでしょうか。
ダハト
ダハトはフランス・ブルターニュ地方のイスという都市の伝説に登場するダユー(Dahut)という姫から取った名前。
本名のリアムはフランスで人気の男性の名前です。
「強い意志」という意味がありリアム殿下っぽいですね。
ヒューゴ
こちらもフランスで人気のお名前、Hugo(ユーゴ)の読み方を変えたのではと考えられます。
意味は以下の通りです。どことなく仲間思いで常識人の彼っぽいです。
ゲルマン語の”hug”からの派生のHugoは、ゲルマン語の言葉では”esprit”「精神、心」、 “pensée”「思い」 または “intelligence”「知性」を意味します。
フランス語の名前はかっこいい?ランキング1位の名は意外と古典的! | フランスの暮らしを楽しむプチ手帳 (monpetitcahier.com)
ナディア・プルースト
ナディアはフランスの他にもロシアでも使われる女性名で、「希望」という意味があるそうです。
彼女はまさにアルペシェールの希望という立ち位置だったんですね。
カプシーヌ
カプシーヌはフランス語で金蓮花のことです。
彼の誕生日である9/6の誕生花で、花言葉は「困難に打ち勝つ」。
なーんてのは仮の姿。
本名のオーティはイラクサという植物のフランス語。花言葉は「残酷」です。
ジャン
ジャンは日本語で言う太郎のようなフランス語みたいです。
怪しまれないよう目立たない平凡な名前にしたのかもしれません。
本名のカミーユは大天使カマエルを語源としたフランス語名で、「神を見るもの」という意味があります。
カマエルは苛烈な性格から堕天使サマエルと同一視される場合もあり、ロザリー以外どうなってもいいという彼に近いものがあるように感じます。
ちなみにロザリーはフランス語でバラ園という意味です。
漂流者
ここからはFDでの新キャラです。
彼の名前は笏木環(しゃくぎたまき)。
笏の木はイヴの名前と同じイチイの木の意味で、昔の日本の貴族が持っていた木の板「笏」を作るのに使われていたんです。
古代ケルト人はイチイの樹木に「輪廻転生」のシンボルを託したと言われています。
名前の環という漢字は、輪や回る・巡るといった意味を持っていると思います。
本来の寿命を教えた存在として正しい生、輪廻転生の象徴という意味が名前に込められているのではないでしょうか。
スピネル
スピネルは宝石の名前で、作中で出てきた守り石がまさにスピネルなんじゃないかと思っています。
「棘」などの意味があり、武力としての彼女を表しているのかもしれませんね。
スピネルには様々な色があるのですが、彼女のイメージである赤やピンクのスピネルには「活力」「勝利」「情熱」「ポジティブ」「自己達成」などの宝石言葉があり、彼女っぽいフレーズだなと感じました。
旧約聖書との関わり
アドルフとイヴのパートでアダムとイヴについて少しお伝えしたのですが、ここで旧約聖書との関わりについて詳しく書いていこうと思います。
先ほどまでの内容を知っているとFDの特装版パッケージに意味がある気がしてきますね。アドルフとイヴが対みたいになってますし。
最初の時間軸のアドルフとイヴがシアンという神に逆らった末、アドルフが時間跳躍という禁忌を犯す、その後永遠の旅路に至り本編ではセレスと結ばれない罰を受けるという流れってアダムとイヴの逸話に似ているように思えます。
アダムとイヴが神の言いつけに背き、知恵の木の実を食べるという禁忌を犯した結果罰を受けるというのが旧約聖書の流れです。
また彼らをそそのかしたのは蛇なのですが、終ヴィルで時間跳躍の技術についてアドルフに教えたのはカミーユ。
カミーユの語源であるカマエル=堕天使サマエルは蛇の姿で果実を食べるようそそのかしたという逸話もあり、旧約聖書と一致します。
カミーユの容姿も蛇がモチーフのように思えてきました。
これらの逸話に関連し、ブルターニュ地方の伝承のアンクゥはアダムとイヴの子供であるという説もあります。
アドルフとイヴの行動の結果アンクゥが生まれたということとも繋がってきますね。
アダムとイヴがいたエデンの園には知恵の木と生命の木があり、彼らが食べたのは前者の実だけですが後者は食べると不老不死になれたようです。
アドルフとイヴからは離れますが、アルペシェールという国全体は知恵とリライバーによる歪な不老不死を得ています。終遠のヴィルシュの世界は、人間が2種類の木の実を食べてしまっていたらどうなったのかという仮定を描いているのかもしれません。
アルペシェールの語源には「原罪」の意味が含まれているので、この旧約聖書の逸話は無関係ではないはず。
ダハトがやろうとしていた国民の粛清も、ノアの箱舟の逸話で神がしたことと同じですしね。
またノアの箱舟の逸話では洪水の後に虹がかかるのですが、FDのテキスト画面に虹がかかっていたり、アンクゥの短編物語で虹が出てきたりと、FDではアルペシェールにとっての災厄が過ぎ去ったことを表している可能性もあります。
終わりに
ここまでがっつり考察したことはなかったのですが楽しかったです。
フランス語が使われているとは思っていたのですが、キャラ名までどっぷりでしたね。
地区以外の用語だと死刑執行人のブロー(bourreau)もそうですし(リライバーだけ分かりやすさ・読みやすさ重視なのか英語っぽいですが)。
それにしても発売からしばらく経つのに、まだこんなに掘る余地があっただなんてもはや終ヴィルが恐ろしくなってきてました。
花言葉も含めここまで様々な要素を詰め込んで、且つ整合性を取るのって本当に難しいんじゃないかと勝手に想像しています。
この記事を書いて改めて終ヴィルの凄さを思い知りました。
今回は以上となります。
かなり長かったと思いますがお読み頂いた方々ありがとうございました。
〈参考サイト〉
イブとは [単語記事] – ニコニコ大百科 (nicovideo.jp)
フランス語の名前はかっこいい?ランキング1位の名は意外と古典的! | フランスの暮らしを楽しむプチ手帳 (monpetitcahier.com)
世界各国で人気がある外国人の名前は?意味や由来なども紹介 | Pokke「ポッケ」
アドルフ – Wikipedia
アダムとエバ – Wikipedia
ノアの方舟(箱舟)のあらすじとは?簡単にご紹介【聖書物語】|キートンの”キリスト教講座” (keaton511.com)
アンクウ (あんくう)とは【ピクシブ百科事典】 (pixiv.net)
精霊 アンクーについて (things-that-enrich-our-life.site)
セレス – Wikipedia
聖クリスティーナ – Wikipedia
フランス語の花と花言葉一覧!どこよりも探しやすい決定版を作ったよ | フランスの暮らしを楽しむプチ手帳 (monpetitcahier.com)
カミーユ (かみーゆ)とは【ピクシブ百科事典】 (pixiv.net)
大天使カマエルとは?色・性格・役割など | 世界雑学ノート (world-note.com)
旅してみよう、古代ケルトの森2 イチイの木 | 嬉野ペン工房TEWOFURU 〜テヲフル〜|ウッドジュエリー
「スピネル」の種類や石言葉を解説|おすすめアクセサリーも – KOSOTTO (uridoki.co.jp)
イエスの12弟子・12使徒 (lets-bible.com)
聖書の「福音書」をざっくり解説! マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの違いとは? (newlifeministries.jp)
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