こんにちは紫乃です。
今回はAmuLitから発売した「ネオンクラッシュ -Echoes of the Lost-」の考察を行っていきたいと思います。
公式からも情報がありましたが、この作品は三国志をモチーフとした乙女ゲームになっています。
これはラウド役の梅原さんもコメントしており、発売前ちょうど時間があったので三国志の予習をしてから臨みました(ガチ)。
実際プレイしてみると思った以上に三国志ゲーだったので、その関わりについてまとめます。
主にメインストーリーとキャラクターに分けて解説していきますので、お付き合い頂けますと嬉しいです。
三国志について
三国志って名前は聞きますが、ゲームや漫画で触れた経験がある人でないとあまり馴染みがないかもしれません。
そもそも三国志って?という所なのですが、元々は中国の3世紀に成立した魏・呉・蜀についての歴史書のことを指します。
これを元に歴史小説としたのが『三国志演義』です。
「7分の事実に3分の虚構」と言われ、大衆向けに脚色されています。
日本で受け入れられている三国志は基本的にこの『演義』がベースとなっているようなので、こちらを参考に考察を進めていきます。
『三国志演義』の特徴として、蜀(劉備)を正当な王朝、魏(曹操)を悪とする立場で描かれていることが挙げられます。
前提として押さえておいて欲しいのがこちらです。
蜀=リュウファミリー(リュウ・クロア)
魏=ソディックファミリー(ソディック・モネ)
呉=ソンファミリー(ソン・マシロ)
最終的にこの三国がメインになってくるので、まずはこれだけ頭に入れて読み進めて頂けると理解がしやすいかもしれません。

三国志とのシナリオ比較
先に物語についておさらいするのが分かりやすいのではと考えたので、ここからはメインストーリーについて言及します。
物語を全て読み終えてみると、かなり忠実に三国志が再現されていることが分かります。
知っている身からすると正直展開が読めてしまう場面もありましたが、それくらいマフィア達を通して歴史をなぞっているんです。
最初にネオクラの舞台である「玖昴国」の名称について。
玖は数字の九、これはネオクラの世界が9つの地区に分かれていることを指しているのでしょう。
昴は星の名前で、統べる=集まって1つになるという意味が由来になっています。
9つの地区が集まって1つになった国ということが名前に込められていると推測されます。
さて物語の方に移るのですが、三国志とネオクラで一致する主だった展開を表にしました。
マフィアの陣取りに形は変えますが、展開が再現されているのが分かるかと思います。
| 三国志演義 | ネオンクラッシュ |
| ①黄巾の乱 教団の教祖であった張角が悪政に苦しむ民衆(信者)と共に蜂起。病を治す等不思議な力を持つとされた。 張角は死亡し乱は終息する。 | ➊黄旗の反乱 ストラグラフを持たない者たちが集まった宗教団体黄旗の暴動。 教祖のカク・ホアンは死亡。 |
| ②桃園の誓い 劉備・関羽・張飛が桃園で義兄弟の盃を交わし、生死を共にする誓いを立てる。 | ❷教会前での誓い クロア・ラウド・ヒヨクが盃でファミリーとなる誓いを立てる。 桃園を意識してかスチル背景にも桃色の花が描かれ、酒は桃酒。 |
| ③反董卓連合の戦い 曹操・袁紹・袁術らが連合軍を結成。 董卓は洛陽を焼き払い長安に遷都。 | ❸反トク連合の戦い 5ファミリーで連合を結成。 徳福タワーは爆破されビエイの拠点が移る。 |
| ④連合軍解体、董卓の死 連合軍は解体し、その後董卓は側近の呂布に裏切られ殺される。 | ❹連合の解体、トク・ビエイの死 連合は解体、ビエイはRの裏切りにより殺される。 |
| ⑤劉備の徐州領有 劉備が徐州の牧(執行官)となる。 | ❺リュウファミリーが傘下を得る モネから小規模マフィアの監督を引き受ける。傘下を得てリュウファミリーの規模が大きくなる。 |
| ⑥呂布の裏切りと死 劉備が呂布を受け入れるも裏切られる。 その後曹操・劉備との戦で呂布は曹操に殺される。 | ❻Rの裏切りと死 リュウファミリーでRを受け入れるも裏切られる。 その後モネにより殺される。 |
| ⑦曹操の劉備追討と関羽の捕縛 劉備は曹操の元で厚遇される。 しかし袁紹との決戦を前に劉備が独立したことで曹操が怒り、軍を差し向ける。 その際関羽は曹操に捕らわれる。 | ❼ソディックとリュウの敵対、ラウドの捕縛 クロアはモネに厚遇されるも決別。 新祥珠駅での戦いでラウドを奪われる。 ソディックにモーテルを奪われ、桃哲の街も荒らされる。 |
| ⑧劉備、袁紹軍へ 関羽が捕らえれ、劉備はやむなく袁紹軍に加わる。 曹操と袁紹の戦いが始まり、曹操が勝利。 戦いの中で関羽は劉備の元へ帰還。 | ❽リュウとショウの同盟 ラウドを失い、奪還の為にリュウはショウと同盟を結ぶ。 ソディックとの戦いの中ラウド奪還に成功。 |
| ⑨劉備が諸葛亮孔明を迎え入れる | ❾リュウファミリ―がユンロンを迎え入れる |
| ⓾赤壁の戦い 映画「レッドクリフ」等でも有名な戦い。 曹操軍80万に対し孫権・劉備軍5万と言われるも打ち破り、三国時代へ。 | ➓光閃チューブでの最終決戦 ソンとリュウで共同し、ソディックに挑み勝利。3ファミリーでの統治を目指す。 |
キャラクター考察
シナリオを比較すると何となく分かるかと思うのですが、ほとんどのネオクラキャラは三国志の登場人物がモデルになっています。
名前の付け方は、「苗字が三国志の人物の実名・名前が三国志の人物の字(別名)」が元となるキャラが多いです。
キャラクターの設定など細部に至るまで三国志のエッセンスが詰まっていた為、詳細を紹介していきます。
サブキャラまで名前の付いたキャラクターは全員一気に行きますのでよろしくお願いします。
リュウ・クロア

モデル:劉備玄徳
劉備のリュウ、玄をクロと読ませて名付けられたようです。
劉備は漢の皇帝の子孫として支持を集めました。
この点も英雄の子孫と言われたクロアと同じですね。
関羽・張飛を従え、後に蜀を建国し皇帝に即位します。
的盧は劉備の乗っていた白い馬の名で、他の銃もそれぞれの愛馬の名前となっています。
ちなみにクロアの父、リュウ・コウヨウも劉備の父である劉弘(りゅうこう)から来ているようです。
また劉備は垂肩耳(耳が大きく肩に垂れるようだった)と言われていますが、大振りで楕円に近いピアスでそれを表現しているのではないかと考えています。
カンテ・ラウド

モデル:関羽雲長
関羽のカン、雲=英語でクラウドから取ってラウドになったんじゃないかと推測してます。
義を重んじ、曹操の元から劉備に戻った点も一致します。
関羽は聡明と言われた切れ長の鳳凰眼と蚕のような臥蚕眉を持っていたとのことですが、ラウドの特徴にも当てはまっているのではないでしょうか。
チョウ・ヒヨク

モデル:張飛益徳
ヒヨクはほぼ張飛の方からの名付けですね。
兵一万に匹敵すると言われた猛将です。
「駆虎呑狼の計」という謀略では張飛が酒に酔うエピソードもあります。
ソディック・モネ

モデル:曹操孟徳
三国志演義では敵役として描かれています。
天下統一を目指すも赤壁の戦いで敗北。
後に魏王の位を授かります。
諸葛亮孔明を凌ぐほどの超一流の兵法家で、他にも文学の価値を高めるなど多才でカリスマ的な存在でした。
発売前のカウントダウンボイスで、モネが「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と語っていましたが、これは兵法書『孫子』の言葉です。
曹操は『孫子』の注を書いたことでも有名です。
また能力主義の世界を目指した所も曹操とモネは同じでした。
絶影は曹操の愛馬で、影を残さないほどの速さというのが由来です。
ソン・マシロ

モデル:孫策伯符
孫一族は孫堅→孫策→孫権という順に継承していき、1番有名なのは呉王となる孫権です。
マシロは特殊で、孫権の兄であり一代前の孫策がモデルだと考察しています。
字の伯に白という漢字が入っているのでマシロとの結びつきが感じられます。
周瑜(≒キント)と親友で人にも恵まれ、「江東の小覇王」と呼ばれました。
しかし呉王となったのは弟の孫権であり、孫策が正式に王の名を授かることはありませんでした。
劉備・曹操の2人は王の名を得ることになる為、作られた偽りの王としてのマシロの立ち位置と類似が読み取れます。
袁術(≒エンジュ)の配下から独立した経緯もシナリオに反映されています。
R

モデル:呂布奉先
Rは呂布のイニシャルですね。
戦の勝敗を左右する武力と言われ、三国志内でも存在感のある人物です。
個人の武力が卓越していた一方、軍のような集団を維持する力は欠けていました。
シナリオ比較にも書きましたが裏切りと放浪を繰り返します。
赤兎は赤い毛並みの名馬で、一日千里を駆けるとも言われました。
ネオクラと同じように呂布→曹操→関羽と持ち主が変わっていきます。
エンジュ・コール

モデル:袁術公路
コールは名前の響きがかなり似ています。
袁術は名門の出身なので、こんな見た目ですがコールもきっとそうなのでしょう。
劉備に破られ、死の際に蜜入りの水を求めるも、それすら得られず絶望して死去したと言われています。
コールの甘いもの好きな所や死に際のことを考えると少し切なくなりますね。
ショウ・フォンビ

モデル:袁紹本初
フォンビはちょっと小物感ありますが、元となった袁紹はかなり力を持っていた人物です。
曹操とは旧知の仲で、袁術と同じ名門袁家の出身です。
袁術とは異母兄弟であり従兄弟という複雑な関係で仲が悪かったそうです。
バジョウ・モクレン
モデル:馬超孟起
馬超は曹操に敗れた後、劉備に仕えることとなります。
さらに曹操に父と弟たちを殺されてもいます。
また馬超からは離れるのですが、曹操は中国北方の民族匈奴を管理しようとしたことがあるようで、これが緋櫻国のルーツではないかと考えています。
とにかく曹操と因縁があるのがレンのキャラ設定の元になっているようです。
シェルビ・ジア
モデル:麋竺子仲
劉備に仕えた臣下です。
弟の麋芳が劉備を裏切ります。
シェルビ・ジホ
モデル:麋芳子方
麋竺の弟です。
劉備を裏切ります。
トク・ビエイ
モデル:董卓仲穎
騒乱の中少帝らを保護したことで権力を握り、朝廷を牛耳り軍事権を掌握しました。
暴虐の限りを尽くしたのは三国志でも同様です。
カトン・ユエ
モデル:夏侯惇元譲
曹操挙兵時からの腹心です。
呂布との戦いの中で戦で左目を失い眼帯となります。
これはネオクラの設定にも残っていましたね。
史実では後方補給や本拠地の守備を担当し、曹操の信頼も厚かったそうです。
秘書としてのユエの一面に繋がる特徴です。
キヨチ・ヨナ
モデル:許褚仲康
ヨナの元の人物は見つけるのに時間がかかったんですが、許褚(きょちょ)を全部大文字で読むとそのままでした。
曹操の親衛隊長で、身長は8尺(184㎝ほど)とヨナと同じくらいです。
怪力の猛将ですが、普段はぼうっとしていた為「虎痴(ぼうっとした虎)」と呼ばれました。
公式の戦闘力は高いが頭が弱い設定もここから来ていると思われます。
ユウ・キント
モデル:周瑜公瑾
赤壁の戦い勝利の立役者ですが、キントは最終決戦ではそれほど大きな役割は果たしませんでした。
周瑜は美男子として有名で、音楽の造詣も深かったそうです。
キントは実はギタリストみたいなので、キャラ設定にも活かされていますね。
リー・ブンエ
モデル:張遼文遠
董卓、呂布に仕えた後、曹操の配下となります。
関羽とは敵ながらも親交があったようで、ブンエが度々助けをくれたのもここから来ていると推測します。
ブンエは控えめでしたが、張遼は魏の五大将軍にも入る優秀な猛将でした。
コウ・シンイー
モデル:郭嘉奉孝
袁紹の配下でしたがこれを見捨て、曹操に仕えた人物です。
モネに心酔しフォンビをこき下ろすイメージが一致します。
ウンジ・ユンロン
モデル:諸葛亮孔明
天才軍師として劉備に仕えた有名な人物かと思います。
ユンロンと名前が全然違うのですが、劉備に迎えられる前の諸葛亮には「臥龍」という異名がありました。
「臥龍」は、中国語読みで wòlóng(ウォロン)です。
これはユンロンのイントネーションとも同じなので、こちらが元になっていると考えられます。
意味は「横たわる龍」でまだ世に出ていない優れた人物のことを指します。
ユンロンがリュウファミリーに加わったタイミングも諸葛亮と一致していますね。
ディオ・レイン
モデル:貂蝉
演義のオリジナルで架空の人物ですが、中国4大美女に数えられています。
董卓と呂布の関係が壊れた原因となるのもレインと同じです。
立ち位置的に貂蝉がモデルで間違いないとは思うのですが、名前の由来は分かっていません。
月も隠れるほどの美しさから「閉月」とも呼ばれました。
貂(動物のテン)の毛皮が黄色なので、彼女のビジュアルが全体的に黄色多めなのではないかと推測しています。
オウ・チェン
モデル:王允子師
政治家でしたが、董卓の暴政に耐えかね暗殺の立役者ともなった人物です。
元警察で国の為に働いていたのが共通点かと思います。
メイメイ
モデル:なし
中国語でメイメイと言うと「妹妹」が挙げられるので、可愛い妹のような存在という意味の名付けではないかと考えています。
ツキ
モデル:なし
ツキの名前の由来は、マシロのストラグラフが三日月っぽいことくらいしか思いつきませんでした。
ちなみにツキと関連のある黄旗の教祖カク・ホアンのモデルは、黄巾の乱を起こした張角です。
張角のカク+黄の中国語読みでカク・ホアンとなります。
ガイ・ユザク
モデル:華雄
董卓の配下として、反董卓連合軍の武将を次々討ち取るも関羽に敗れます。
ネオクラでもユザクを破ったのはラウドでした。
体が大きく厳ついイメージ通りの見た目です。
レイゼン・キア
モデル:紀霊
袁術の配下です。
ファン・リシュ
モデル:李儒
董卓の配下です。
終わりに
プレイしたことがなかったので後から気づいたのですが、他の乙女ゲームだと十三支演義や三国恋戦記も三国志物だったんですね。
意外と三国志物がある。
今ならするするキャラ名覚えられそうです。
三国志に関してはほぼ0からのスタートだったのですが、この機会で大分詳しくなった気がします。
ネオクラは予想していた以上に三国志の要素が多く驚かされました。
まさか早々に退出するサブキャラたちまでモデルとなっていそうな人物がいるとは。
ゲーム自体もキャラクター達が皆魅力的で、考察もがっつり出来たので楽しみ尽くせて満足です!
長くなりましたが今回の記事は以上となります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
〈参考文献〉
・『図解雑学 三国志演義』(渡邉義浩、ナツメ社、2007年)
・『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる三国志』(入澤宣幸、西東社、2014年)

コメント